悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第4章 レオン・クロード
「昔は、そうだったかもしれませんわね」
私が茶目っ気たっぷりにそういうとレオンは笑った。
その笑顔は、まっすぐで、どこか庶民的な温度を持っていた。
「じゃあ、いくぜ。背中、預けるぞ」
「ええ。こちらも、あなたに任せます」
背中を合わせて立つ。
魔力を剣に込める。
火と闇。
庶民と貴族。
でも、今はただの“剣士同士”。
敵役の幻影が現れる。
レオンが前衛、私が後衛。
息を合わせて動く。
彼の剣が炎を纏い、私の魔力が闇属性の盾を展開する。
「ナイス連携!お前、意外とやるじゃん!」
「ふふ、あなたの動きが分かりやすいからですわ」
「おいおい、褒めてんのか?それとも皮肉か?」
「もちろん、褒め言葉ですわ。……庶民騎士の剣、侮れませんもの」
レオンが笑う。
その笑顔に、私もつられて笑った。
演習後、レオンがぽつりと呟いた。
「……お前さ、貴族って感じしねぇな。
剣の振り方も、魔力の使い方も、なんか……“生きてる”って感じがする」
「それは……褒め言葉として受け取っておきますわ」
「俺さ、貴族って苦手なんだよ。
型ばっか気にして、実戦じゃ役に立たねぇ。
でも、お前は違う。ちゃんと“戦える”」
その言葉に、胸がじんわりと熱くなった。
(好感度+20、確定……!)
でも、それ以上に嬉しかったのは──
“戦える”と言ってくれたこと。
この世界で、私は“しおり”として生きている。
誰かに守られる令嬢じゃなく、誰かと並び立つ存在として。
そして今、レオン・クロードという“火の騎士”が、
その第一歩を踏み出してくれた。
演習終わった。
背中を預けて、魔法剣を交えて、連携して、褒められた。
──褒められた!!!!
「お前、変わったな。前はもっと、こう……ツンツンしてた気がする」
「今のお前は、俺は好きだぜ。剣を預けられるって、信頼してるってことだからな」
──はい、語彙力死亡。