悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第4章 レオン・クロード
彼は、まるで旧知の友人に話すような口調で笑った。
その距離感が、心地よかった。
「それにしても、さっきの舞踏、見てたぜ。
あの氷の公爵様と踊るなんて、肝が据わってんな!」
「……肝、ですか?」
「おう。俺だったら緊張で魔力暴走してたかもな。
でも、お前はちゃんと踊ってた。すげぇよ」
その言葉に、私は思わず笑ってしまった。
“貴族のくせに熱い”という彼の評判は、本物だった。
「ありがとう、レオンさん。あなたの言葉、なんだか……元気が出ますわ」
「そりゃよかった!じゃあ、次の演習、俺と組もうぜ!
剣でも魔法でも、俺は頼れるぞ?」
「……ふふ、楽しみにしていますわ」
その瞬間、彼の好感度が“ぽん”と上がった気がした。
火属性らしい、まっすぐな温度。
それは、氷の舞踏とは違う、心に灯る炎だった。
そして彼との再会はすぐに訪れた。
騎士科との合同剣術演習である。
王立魔法学園『アカデミア・グランヴェール』。
午後の剣術演習。
魔法剣を用いた実戦形式の授業は、貴族子弟たちの中でも特に人気が高い。
私は、ヴァイオレット・ド・ローゼン。
でも中身は、藤咲しおり。
破滅フラグを回避するため、好感度イベントは逃せない。
今日のペアは──レオン・クロード。
騎士科主席。炎属性。
庶民出身の貴族で、貴族社会の“型”に染まりきらない、異端の存在。
「よっ、ローゼン嬢。今日の相手、俺で悪かったな」
「いえ。むしろ、光栄ですわ。あなたの剣術は、学園でも評判ですもの」
「……へぇ。意外と話せるじゃん。てっきり“氷の令嬢”かと思ってた」
「昔は、そうだったかもしれませんわね」