悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第4章 レオン・クロード
魔法礼儀演習が終わった後、講堂の片隅で私はそっと息を吐いていた。
ルシアンとの舞踏は、緊張と感動の嵐だった。
でも、まだ終わりじゃない。
この学園には、破滅フラグを回避するための“好感度イベント”が山ほどある。
(次は……レオン・クロード。火属性の騎士科主席。庶民出身で、情に厚くて、熱血で……)
ゲームでは、彼とのイベントは「転倒→手を差し伸べられる→好感度+15」が定番だった。
でも、今は攻略サイトもセーブもない。
自分で“イベント”を起こすしかない。
そんなことを考えていたら──本当に、転んだ。
「うわっ……!」
魔力の余波で床が滑り、私はバランスを崩して前のめりに倒れかけた。
その瞬間、誰かが素早く腕を伸ばして、私の身体を支えた。
「おっと!危ねぇ!」
見上げると、そこには赤毛の青年。
快活な笑顔と、力強い腕。
レオン・クロードだった。
「大丈夫か?貴族様でも、転ぶことあるんだな」
「……す、すみません。ちょっと足元が……」
「ははっ、気にすんな。俺もよく転ぶ。魔力制御って、意外と難しいよな」
彼は、まるで旧知の友人に話すような口調で笑った。
その距離感が、心地よかった。