悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第3章 ルシアンと神楽坂蓮
俺は、彼を演じていた。
でも今は、彼として生きている。
「……なら、俺はルシアンとして生きる。
この世界で、誰かに選ばれるために」
けれど、俺はもう“台本”に従うつもりはない。
この世界がゲームだとしても、俺は“演じる”だけの存在じゃない。
俺は、神楽坂蓮だ。
そして今は、ルシアン・ヴァルモンとして、
この世界で“自分の物語”を始める。
――そして、時は舞踏練習の時に遡る。
俺は、神楽坂蓮だった。
声優として、数えきれないほどのキャラクターを演じてきた。
その中でも、ルシアン・ヴァルモンは特別だった。
冷徹で孤高、でも心を許した相手には激重愛を注ぐ男。
俺は彼の孤独に、どこか自分を重ねていた。
そして今、俺はその“彼”になっていた。
この世界で、ルシアンとして生きている。
演じるのではなく、呼吸し、魔力を感じ、選ばれるのを待っている。
――そんな俺の前に、彼女は現れた。