悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第3章 ルシアンと神楽坂蓮
収録が始まると、俺はルシアンになった。
台詞を読むたびに、彼の孤独が胸に刺さった。
誰にも心を開けない。
でも、誰かに選ばれたい。
その願いを、俺は知っていた。
「君が誰を選んでも、僕は君を忘れない。……でも、願わくば、僕を選んでほしい」
その台詞を録った日、俺はスタジオの帰り道で空を見上げた。
春の風が吹いていた。
どこか、懐かしい気がした。
(もし、あの世界に生まれていたら。
俺は、ルシアンとして生きられただろうか)
その瞬間、視界が白く染まった。
目が覚めた瞬間、まず思ったのは──「収録、終わったはずだよな?」だった。
天井が高い。
空気が冷たい。
ベッドが広すぎる。
そして、身体が……重い。いや、違う。長い。腕も、脚も。
「……ここは……?」