悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第2章 主人公と友達になろう!
でも、こうして誰かに“素敵”と言われるのは、やっぱり嬉しい。
「ありがとう、アメリア。……あなたにそう言ってもらえると、少し救われる気がしますわ」
「えっ、救われるって……?」
「ふふ、なんでもありませんわ。ちょっと、昔の自分に呆れていただけですの」
アメリアは首をかしげながらも、にこっと笑った。
「でも、私、今のヴァイオレット様のこと、もっと知りたいです。……もっとヴァイオレットさんの事知りたいです!いいですか?」
その言葉に、私は一瞬、言葉を失った。
ゲームでは、絶対にありえなかった展開。
アメリアは、ヴァイオレットを“敵”としてしか見なかったはずなのに。
「……それは、私の方こそお願いしたいくらいですわ」
「わあっ、やった!」
アメリアが嬉しそうに笑う。
その笑顔は、まっすぐで、あたたかくて、
私の胸の奥に、じんわりと灯をともした。
「このお菓子、すごく美味しいですね!これ、ヴァイオレット様が選んだんですか?」
「ええ。ここのパティシエは、季節の果物を使うのが得意なの。今日は苺のタルトがあると聞いて、つい」
「苺……!私、大好きなんです!」
「ふふ、よかった。じゃあ、次はあなたのおすすめも教えてくださる?」
「もちろんです!庶民の味、侮れませんよ!」
アメリアが誇らしげに胸を張る。
その姿に、しおりは思わず笑ってしまった。