悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第2章 主人公と友達になろう!
「……君が、そう言うとは思わなかった」
そして、手を差し出した。
その瞬間、心臓が跳ねた。
推しの手。推しの声。推しの瞳。
全部が現実になって、私の前にある。
「よろしくお願いいたします」
私は令嬢らしく微笑んで、スカートの端を摘み、優雅に一礼した。
でも、内心では語彙力が崩壊していた。
(無理無理無理、尊すぎる……!)
音楽が流れ始める。
氷属性の魔法が舞踏に合わせて空気を冷やし、白い霧が足元に広がる。
ルシアンの手は、思ったよりも温かかった。
「君の動き……以前とは違うな」
「ええ。少し、変わったかもしれません」
訝しるルシアンの質問に笑顔でかわす。