悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第2章 主人公と友達になろう!
「……ルシアン公爵と踊るイベント。これ、ゲームだと好感度+20のやつじゃん……!」
でも、今は攻略サイトもセーブもない。
彼に嫌われたら、破滅フラグ一直線。
しかも、ここでヘマする訳にはいかない!
緊張で心は震えるが、流石お嬢様チート炸裂!
鏡の前のわたしは、落ち着いて背をのばし優雅に立っている。
「……でも、やるしかない。推しに好かれるために、私は踊る」
講師がペアを指名する声が響く中、私は一歩前に出た。
「公爵様。もしよろしければ、私と踊っていただけますか?」
ざわめきが広がる。
ルシアン・ヴァルモンは、誰の誘いも断ることで有名だった。
でも彼は、静かに私を見つめた。
「……君が、そう言うとは思わなかった」
そして、手を差し出した。
その瞬間、心臓が跳ねた。
推しの手。推しの声。推しの瞳。
全部が現実になって、私の前にある。