悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第19章 神楽坂蓮としおり
「……頼む。あの席にいた女性を、こっそり楽屋まで案内してくれないか」
マネージャーにそう告げると、彼は少し驚いた顔をしたが、すぐに頷いた。
楽屋の椅子に腰掛けて待つ間、心臓が落ち着かない。
声優として数々のイベントを経験してきたはずなのに、こんな緊張は初めてだった。
やがて、ドアがノックされる。
「どうぞ」
ドアが開き、彼女が立っていた。
彼女だ!――夢で涙を流したヴァイオレットが、現実の姿でそこにいた。
美容院で整えた髪、少し気張った服装、化粧で彩られた顔。
それでも、瞳の奥に宿る光は夢で見た彼女と同じだった。
「……来てくれたんだな」
言葉が自然に漏れる。
彼女は狼狽えながらも、微笑んだ。
「まさか、呼ばれるなんて思ってなくて……」
その声を聞いた瞬間、胸の奥が熱くなる。
夢と現実が重なり合い、確信に変わった。
――彼女はヴァイオレットであり、1人の女性でもある。
俺は一歩近づき、彼女の瞳を見据えた。
「夢の中で言ったこと、覚えているか?
この物語を終わらせるために、俺が鍵だと」
彼女の瞳が揺れる。
そして、静かに頷いた。
「……ええ。だから、ここに来たんです」
その瞬間、胸の奥で何かが解けた。
夢で繋いだ絆が、現実でも確かに繋がった。