悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第19章 神楽坂蓮としおり
俺はルシアンとしての微笑を浮かべながらも、瞳の奥では蓮としての熱を隠しきれなかった。
「この物語は、まだ終わらない」
そう確信しながら、彼女を見つめ続けた。
舞台照明が眩しく、観客の歓声が波のように押し寄せる。
俺はルシアンとしての台詞を口にしながらも、心の奥では蓮としての鼓動が高鳴っていた。
観客全体に向けて声を放ちながら、ほんの一瞬だけ、言葉の響きを変える。
舞台の上からは誰も気づかない、けれど彼女にだけ届くような微かなニュアンスで。
「……この物語を、君と終わらせたい」
台本にはない一言。
観客には芝居の延長に聞こえるだろう。
だが、俺の視線は彼女だけに注がれていた。
彼女の肩が僅かに震えたのが見えた。
――届いた。
夢の中で交わした言葉が、現実の舞台で再び繋がった。
舞台の上から響いた蓮様の声。
「……この物語を、君と終わらせたい」
一瞬、耳を疑った。
台本にはないはずの言葉。観客には芝居の延長に聞こえるだろう。
けれど、私には分かった。
あれは、私に向けられた言葉だ。