悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第18章 本当の自分へ
少し挑発的な物言い。
これは台本にも、ゲームのシナリオにも存在しない選択肢。
けれど、私の胸の奥から自然に溢れ出た言葉だった。
彼は一瞬驚いたように瞳を揺らし、やがてその奥に神楽坂蓮の意識を宿した。
氷の公爵らしからぬ、暖かい眼差しを私に向けて――その手の甲に唇を落とす。
「喜んで。我が婚約者どの」
その声は低く、熱を帯びていた。
今までのルシアンが見せたことのない、柔らかく熱っぽい微笑みが夜風に溶けていく。
私たちは木の下へと歩みを進め、夜風を曲にして踊り始めた。
真夜中のダンス。
互いを認め合い、わずかながら執着という恋心を秘めた、最後のダンスだった。
――うん!真夜中のダンス……隠れイベント攻略!
心の中でそう叫ぶ。大満足だった。
ゲームの中で初めて、本当に絆を繋いだ物語。
自然と瞳が涙で歪む。
ヴァイオレットとしての私も、しおりとしての私も、同じ感情で震えていた。
この瞬間だけは、役でもキャラクターでもなく、確かに“私”だった。