悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第18章 本当の自分へ
沈黙が流れる。
彼女の唇が僅かに震え、張り付いた微笑が崩れかける。
「……もし、君が本当にヴァイオレットだけではないのなら。
この物語を終わらせるために、俺は君と向き合わなければならない」
俺はそう告げ、彼女の瞳を見据えた。
氷の公爵ルシアンとしてではなく、神楽坂蓮として。
ルシアン様の瞳が、私を逃さぬように射抜いていた。
「誤魔化すな。俺は見た。君の奥に潜む“もう1人の君”を」
その言葉に、胸の奥が跳ねる。
――もう隠し通せない。令嬢チートではでは隠しきれない。
私は深く息を吸い、令嬢の仮面を少しだけ外した。
「……そう。あなたには見えてしまったのですね」
声が震える。だが、それはヴァイオレットのものではなく、私自身――“しおり”の声だった。
「わたしはヴァイオレット。けれど同時に、ヴァイオレットではない。
この世界に紛れ込んだ“誰か”……それが、わたし」
ルシアン様の瞳が揺れる。
氷の公爵の冷徹さの奥に、神楽坂蓮としての意識が滲んでいるのを、私は確かに感じ取った。
「あなたも気づいているのでしょう?
この世界はただの舞台じゃない。
キャラクターが人間のように動き出している。
そして……この物語を完結させなければ、私たちは帰れない」
言葉を吐き出すと同時に、胸の奥で何かが震えた。
――これは告白。正体を明かす瞬間。