悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第18章 本当の自分へ
あそこなら、影に隠れればおいそれとは見つからない。
「ヴァイオレット……君に問いかけたいことがある」
彼女は先程のように微笑を浮かべ、何も知らぬ令嬢のように首を傾げる。
だが、その仕草の奥に、俺は確かに“違和感”を見た。
「君はただの令嬢ではない。
氷の薔薇を咲かせた時、俺はその奥に別の存在を感じた。
……君の中に、“誰か”がいるのだろう?」
言葉を吐き出すと同時に、胸の奥で神楽坂蓮としての自分が囁く。
――これは台本にはない。だが、俺は確信している。
彼女の瞳が揺れる。
彼女の張り付いた微笑の奥で、ほんの一瞬、別の光が走った。
「公爵様……幻想的なことを仰いますのね」
彼女は微笑みを深め、誤魔化そうとする。
だが、俺は一歩踏み込む。
「誤魔化すな。俺は見た。
君の奥に潜む“誰か”を。そして……この世界の違和感を」
沈黙が流れる。