悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第17章 ルシアンとヴァイオレット
「翻弄されたことを認めよう。だが、それでもなお……私は君を手放さない。
ヴァイオレット嬢の奥に潜む“君”も、ヴァイオレットも……そのすべてを私のものにする」
氷の公爵の執着の熱が、医務室の空気をさらに張り詰めさせる。
レオン様は剣を抜くような気迫で立ち、ノエル様は水晶版を掲げ、ユリウス様は庇護の意思を強める。
――医務室は、まるで戦場の前夜のような緊張に包まれていた。
そしてその中心にいるのは、氷の薔薇ヴァイオレット=しおり。
「きゃー!医務室での出来事、お芝居みたいでしたね!」
アメリアは私の自室に駆け込むと、恍惚とした表情で語り始めた。
「ヴァイオレット様を巡って、四人の男性が争うなんて……まるで舞台みたい!」
彼女は頬を紅潮させ、夢見るように笑っている。
私はその様子を見ながら、心の中で冷静に突っ込んでいた。
(――いや、そもそもお芝居でもやって欲しいイベントザクザクだったんですけど。これ乙女ゲーのなかだし)
アメリアのはしゃぎ声が部屋に響く中、場面は切り替わる。
夜の静けさに包まれた書斎。
氷の公爵ルシアンは窓辺に立ち、月明かりを見つめながら自問自答していた。
「なぜ、私はヴァイオレットに固執するのだろう……」
彼の瞳には、医務室での光景が焼き付いていた。
氷の薔薇を咲かせ、周囲を翻弄するヴァイオレット。
その姿は冷徹でありながら、儚く、抗えぬ魅力を放っていた。
「彼女はただの令嬢ではない。
氷の微笑の奥に、別の存在――“誰か”が潜んでいる。
その二重性が、私を惹きつけてやまないのか……」
彼は拳を握りしめる。
「翻弄されるたびに、私は彼女を求める。
彼女が私を試しているのなら、それに応えたい。
だが、もし本当に別の存在がいるのなら……私はそのすべてを知りたい。
ヴァイオレットも、”彼女”も――その両方を」