第1章 いつか夜が明けた時には
春香という少女のおかげで、一行は宿を手に入れた。
領主の風のせいで屋根はないが……。
(眠れないな……)
は、目の前に広がる夜空にため息をついた。
今まで、は、日本のどこにでもいる平凡な女子高校生として生きていきた。
気が付いたら異世界の旅に同行することになり、今回は屋根のない部屋で眠ることになった。
(いつか野宿とかもするのかな……)
慣れない環境で寝付けないまま、朝を迎えた。
春香は、この国相応しい服を町の人達から借りてきてくれた。
さっそくその衣装に着替えると、春香、小狼、サクラが外に出て、羽根を探索することとなった。
その間、ファイ、黒鋼で気の壊された屋根を直すことにした。
本当はも探索を手伝おうかと思ったが、
「ちゃんは、あの息子ってのに目をつけられてるし危険だよー」
とファイに止められてしまった。
そう言われると、確かにあの無骨な手の感触を思い出し、おとなしくしている気分になるのだった。
「大丈夫ー?」
異世界旅行の寂しさと、寝不足による頭痛と、領主の息子の気持ち悪さで、沈んでいると、ファイが顔を覗き込んできた。
「は、はいっ……!大丈夫です」
いきなりのファイのアップに、は心臓が飛び出しそうになった。
ファイはそれに気づかないのか、ならいいけどーと言って黒鋼をからかいに行ってしまった。