第6章 Call my name
ファイはをエスコートし、天照帝と知世姫に挨拶に向かう。
小狼は目覚めているが、一番重傷の黒鋼はまだ眠ったままだ。
回復傾向にはあるようだが、やはり心配なのでと黒鋼の様子を2人は見に行くことにした。
黒鋼のところまでは、知世姫が案内役を買って出た。
黒鋼は……
丁寧に治療されていて、
左腕と穏やかに眠りすぎている点以外は、いつも通りに見える。
その姿に、は心から感謝して、知世姫に頭を下げた。
「知世姫、助けていただいて本当にありがとうございます……」
「とんでもないことですわ。
この通り、黒鋼も落ち着いていますし、暫しの休息としていただければと思いますわ。
何かお困り事があれば、なんでも仰って下さいな」
「あ、じゃあ1つ……。
その……今夜から、私の眠る部屋をいただけませんか?」
先ほどなぜかファイの隣で寝ていた。
おそらく目を覚さないのを心配してくれてのことではあるのだろうけれど、目が覚めた今、年頃の女の子を自称する彼女としては、正直気が休まらないのだ……。
しかし、知世姫にっこりと笑って、
「同室の方が良いですわよね?」
とファイに聞いた。
ファイはもちろんですーと明るく答え、知世姫は微笑む。
「貴方方は結ばれるくして結ばれる運命の相手でしょうから、離すなんて無粋な事は出来ませんわ。
貴方の王からも聞いています。
何れ貴方とともに来る女性が貴方の運命の人だと。
本当にその通りお似合いですわ。」
アシュラ王の話が出て心配になりファイさんを見上げた。
ただ、その瞳には「もう大丈夫だよ」と強い色が宿っていた。
その瞳と2人の笑顔には完敗だった……。