第6章 Call my name
セレス国から何とか脱出できて、重傷を負った黒鋼さんは担架で運ばれて……
の記憶はそこで途絶えている。
そして、の隣には、フワフワとした金髪。
……どうして私は今、ファイさんの隣で寝ているの?
と疑問に思ったが少し動いてしまったからか、敏感なファイも覚醒した。
「……ん、!!
ちゃん、目覚めたんだねー…!
どこか痛いところとかない?大丈夫?」
東京でファイの餌になってから、それは決して口に出されることのなかった言葉。
ファイは距離を置くため、「ちゃん」とは呼ばないようにしていた。
それでは気付いた。
あぁ、これは夢なんだ、と。
ファイさんは私のことをもう名前では呼ばないし、こんなに心配もしてくれないし、一緒に眠ってくれる訳もない。
本当、最高にリアルな夢。
ファイは、ぼぅっとしているの目の前で掌をヒラヒラとさせる。
「おーい、大丈夫ー?」
「あ、はい!大丈夫です!」
「なら良かったー。ここは日本国の白鷺城だよ。
黒りんが元々いた場所だから、安心して休めるよ」
ファイの瞳が、優しい蒼色でを見つめる。
それはまるで、彼が吸血鬼になる前のような色。
それを見たら、の思いを止めることはもうできなくて、ファイを思わず抱き締めて、唐突に告げてしまった。
「ファイさん、好きです……」
ファイの蒼が見開かれた。
「えー、ちょっとちゃんいきなりの告白はズルいよーぅ。
オレが先に言いたかったのにー」
そう言いながら、ファイは腕をに回して抱き締めると……
「痛っ……!て、え、夢じゃない!?」
「セレスで受けた傷が痛んじゃった……?
……本当にごめんね。
てか、夢ってひどくないー?」
未だに傷は何となく痛むような気はしたけれど、
ファイの瞳が、今なお優しく煌めいていて。
これが現実なんだと思うと、たまらなくなって。
の瞳からは自然と涙が溢れてきてしまった。
「え、そんなに痛かった!?」
「違うんです……!その、嬉しくて」
語彙力の足りないの言葉にも、ファイさんは優しく微笑んでくれた。