第4章 残る想いと結ぶ誓い
そのまま、仁美の唇にゆっくりとキスを落とした。
軽いキスはすぐに唇が離れる。
まだ怒った顔のまま固まっている仁美の頬を、親指でゆっくり撫でた。
「……その顔。ほんま、俺のこと腹立っとるやろ。」
仁美の眉間の皺を見ながら直哉は笑って言った。
「けどな……そうやって噛みついてくる仁美が、一番かわええんや。意地張って、強がって、すぐ怒って……ほれ、この顔。」
怒ることにすら軽くあしらわれ、仁美は直哉を睨んだ。
直哉はその視線すら愉しむように、ゆっくりと顎をつかんで顔を上げさせた。
「ほら、見せぇや。……俺だけに。」
そう言って直哉は湯の中でスラリと仁美の背中をなぞった。
仁美が息を呑んで背中が跳ねると、直哉の唇がその耳の下に触れた。
「なぁ、仁美……さっきみたいに怒った顔でも、泣きそうな顔でも、全部、俺に見せとけ。他に見せんな。」
ゆっくりと腕が腰へ回り、湯の中でふたりの距離がじわりと詰まっていく。