第4章 残る想いと結ぶ誓い
湯気がふわりと立ちのぼる中、向かい合って座る仁美の背に、直哉の片腕がゆっくりと回された。
直哉は仁美の顔を覗き込み、心底めんどうくさそうな声で言う。
「……言うとくけどな。俺は、お前みたいに気ぃ強い女、好かんねん。」
真正面からディスられて、仁美の眉がきゅっと吊り上がる。
さらに直哉は続ける。
「それになぁ……。お前、ほんま夜も下手やろ。気に入らんわ。」
湯の表面がぴしゃりと揺れた。
仁美は怒気を隠す気などまったくなく、遠慮なくその不機嫌な顔を直哉に向けた。
「……さいなら。ほな、白椿さんのとこ戻ったら?」
と、今にも言いそうな勢いの表情。
その顔を見て、直哉はふっと笑った。
肩がわずかに揺れて、本気の、喉の奥から出る笑い。
「はは……せやからや。仁美は分かりやすぅて、おもろいんや。」
そして、仁美の頬に指先をそっと添える。
直哉は静かに、迷いなく言った。
「……お前やったら、全部許せる。どんだけ苛ついても、どんだけ下手でも……仁美やったらええ。」