第2章 奪われた初恋と手に入れた女
「泣きそうな顔しとったで。お前が“俺選ぶ”言うた瞬間にな。」
仁美 の肩が少しだけ揺れると、直哉はそれを見逃さない。
むしろ愉しそうに息を漏らす。
指先で頬をなぞりながら、視線を逃がすたびに顎を軽く持ち上げる。
そして仁美の唇に触れると、慣れたキスをする。
舌が絡んできても、仁美は直哉に従うようにその舌に応じた。
キスは静かで長い。
言葉を奪うように深く、息を吸い取るみたいにねっとりと。
離れた瞬間、直哉は仁美の髪を指に絡めてゆっくり引いた。
「そない顔して、悟くんの前では泣かんかったんやろ?えらいなぁ。悟くんの前ではええ子したんやな。」
それでもなにも言わない仁美に、直哉は静かに目を細めた。
「……なぁ、仁美。悟くんに全部バラしたら……どんな顔する思う?」
その言葉に仁美の胸が強く鳴った。
その声は優しいのに、言ってることは悪意しかない。
仁美は反射的に直哉の胸を掴んで、声を震わせて言った。