第2章 奪われた初恋と手に入れた女
あまりに悪い顔で自然に言う直哉に、仁美の目が揺れた。
その言葉の意味は、二人だけが知っていた。
仁美の純潔は――
とっくに直哉のものだった。
それを悟は知らない。
知らないまま負けた。
直哉はその事実を、仁美の鎖骨のあたりを指でなぞりながらゆっくりと愉しんでいた。
「……なぁ、仁美。」
呼ばれた名前に、仁美はわずかに顔を上げる。
直哉は唇の端だけで笑い、腕の中に引き寄せるように抱いた。
「教えてや。」
声が低く、耳のすぐ近くで落ちる。
「俺に抱かれながらの悟くんとの初恋はそんな楽しかったんか?」
触れ方は優しいのに、言葉は意地悪で、問いかけは逃がす気のないものやった。
直哉の手は仁美の背をゆっくり撫で、まるで“ここからはもう俺の領分や”と言うように、支配の熱を静かにまとわせていく。
「……悟くん、可哀想やったな。」
わざと一番最初に悟の名前を出す。
声は優しそうやのに、その言葉は仁美の胸に刺さる様だった。