第1章 壊れぬ妻と飽きない夫
「使えなければ、直哉の子供を“産ませれば”よい。」
「相伝が好ましいが、返命と縁火。どちらかが遺伝するだけでも価値がある。」
「財閥の娘なら、資金源にもなる。」
「女としての役目は十分果たせる。」
仁美 の人格や気持ちなど、最初から眼中にない。
そのもっとも近い座敷の奥で、まだ若い直哉が腕を組んでいた。
大人たちの話を聞きながら、笑うのでも怒るのでもない――
ただ興味なさそうに、薄く口角を上げる。
「……ほんま、しょーもないわ…。」
悟が守ろうとしていた少女を、禪院家が、そして直哉が――。
“道具として迎えに行く”
そんな空気が静かに満ちていった。