第9章 揺らぐ灯と交わらぬ影
「……まだ泣いとったんか。」
直哉がのぞいた仁美の顔は、目を赤くさせて大きな瞳から涙がまだ流れていた。
「分からへん……どうしたらええのか、ほんまに分からへん。」
仁美の涙が直哉の手をつたり、直哉はたまらずに仁美の顔を自分に引き寄せた。
「仁美、余計なこと考えたらあかんで。」
仁美の涙を拭いながら、震えている唇にキスをする。
仁美の泣き声ごと喰らうようなキスを何度もして、仁美の体を強く抱き締める。
「今まで通り、俺の側におったらええ。勝手なことしたら許さんからな。」
そう言って直哉は仁美の手を取ると、そのまま脱衣所に入った。
いつもなら仁美にしてもらう奉仕も、自分から仁美にした。
仁美の体を拭いて、泣き止まない仁美の涙を何度も拭う。
他の者が見たら驚くような光景だろう。
だけど直哉はそうしなければ落ち着かなかった。
仁美を泣き止ませることは出来ないと分かっているのに。
今仁美を離すことは出来なかった。