第8章 禪院の道具と女の本音
入って来た直哉を確認すると、仁美は顔を上げてベットから降りようとした。
「そのままでええで。」
直哉は仁美に声をかけて、自分から仁美の方に寄った。
「…お帰りなさい。」
「…ん。」
ベットの横に直哉が座り、その重さでベットが沈んだ。
しばらくジッと見ていた直哉の手が伸びて、仁美の頬に触れた。
「思っとったより、体調ええみないやな。」
「…別に体調悪くないよ…。」
直哉の言葉に仁美は顔を晒して言った。
この仁美の態度は彼女が機嫌が悪いことを表しているのを直哉は知っている。
「っいたっ。」
「体調悪ないんやったら、出迎えくらいせぇ。腹立つわ。」
仁美が出迎えに来なくて直哉も腹が立っていたので、仁美のほっぺたをぎゅっとつねった。
仁美は直哉の手を払うと、つねられた頬を刺さりながら直哉を睨む。
「うち今日、本家行っとってん。あんた三日も帰ってこんかったけど、仕事やないみたいやな。」