第6章 檻の中の蜜と矜持
花街で直哉を見送り悟と話した後、仁美は禪院家本家に向かった。
屋敷の門をくぐった瞬間、空気が変わる。
ここは“家”ではない。
禪院という名の、組織の中心だ。
案内されるままに通された座敷。
そこにはすでに、当主・禪院直毘人が座っていた。
襖を開けると側に大きな酒瓶を持った直毘人がゆっくりと立ち上る。
「……来たか。」
仁美は膝を折り、静かに頭を下げる。
「……昨日は、ご迷惑をおかけしました。」
その言葉を待っていたかのように、直毘人は小さく息を吐いた。
「ほう。迷惑、か。」
視線が鋭く突き刺さる。
「花街での一件、随分と派手だったそうだな。」
直毘人はゆっくりと酒瓶に口を付けた後続けて言った。
「直哉の妻だ。目立つのは構わん。だが――“はき違え”は困る。」
言葉は淡々としているのに、その奥には明確な圧があった。
「お前は、自分が何者か分かっているか?」
仁美は顔を上げずに答える。
「……禪院直哉の妻です。」
「それだけではない。」