第2章 トリップ出来たんですけど
就職活動の面接も、器用にこなすことは到底できなくて、運よく小さな会社にひろってもらえた。
みんなすごく優しくて、でも
私は毎日薄ら笑いをしてる。
そんな私を心から笑わせてくれたり、心から感動させてくれるもの。
些細な楽しみ。
昔から大好きな漫画を読むときだけは、本当の自分でいられる。
自分に出来ないことを、夢をどんどん追いかけていく主人公に…私の思いも連れていってくれているような気がした。
特にお気に入りの「NARUTO」。
昔から何かとからかわれた自分の名字と同じ名字の主人公。
誇らしげに名乗りをあげて、誰にも屈しない強い志で突き進んでいくその姿に、自分の名字を初めて誇らしいと思った。
彼の言葉ひとつひとつに感動した。
勇気をもらった。
『お疲れ様でした…』
「気を付けてね。お疲れさん」
いつもと同じ時間、17:15にタイムカードを押して会社を後にした私は、
大好きなNARUTOの新刊を本屋で買い、どこに行くでもなく真っ直ぐ帰宅した。
『ただいまぁ』
「おかえり~。先にお風呂はいっちゃいなさい」
いつもと変わらない母との会話。
生活。
特に不自由もなく、これといって不満もない。
でも…充実してるとは思わない。
布団に入り、ふと机の上に置いてある
NARUTOの単行本を見ると…時々思うのだ。
彼らに会えたらいいのにな。
彼らと過ごせたら…私は変われるのではないかと…。
そう、NARUTOの世界にいってみたいなと。