第8章 私とワタシ
すると、背中に感じていた重みと、拘束していた力が緩み、解放された安堵から、目の前の壁にもたれかかる。
ゆっくり振り向いた私は、締め付けられてジンと痺れる手首をさすりながら、
カカシ先生に向き合う。
「君さぁ…この状況で照れるっておかしいでしょうよ?」
そっち系の趣味でもあるのかね…?
等とブツブツ言うカカシ先生の言葉の意味は分からないが、
照れるという単語に、動揺している自分がいた。
なんというか…さすがは忍というか…。
侮れがたし…はたけカカシ。
「ごめ~んね。ちょっと、強引だったね。悪かった。」
う~んと唸りながら余計なことまで考えていた私は、頭上からふってきたカカシ先生の声に反応するように、顔をあげた。
うっわ…近い…。
やっぱりかっこいい…。
何とも場違いな感想ばかりがぐるぐると頭を支配している私をよそに、
カカシ先生は本題を切り出してきた。
「ちょっと気になることがあって、確認したかったんだよね。俺の予想がはずれていなければ、場合によっては…拘束させてもらう…。」
語尾の雰囲気は…有無を言わせない迫力があった。
先程の突然の拘束、今回のこの様子からして、
私を疑っている…。
そう予測するのはごく自然な流れだった。
そこまで鈍感なほうではないと、自負している。
どうするべきか…。
私の背中を冷たい汗が流れるのを感じていた。
「単刀直入に聞く…。お前…
本当に太巻瑠璃か??」
きた…。
やはりビンゴ。
この人は私を疑っている。
嘘をついても、突き通せる自信はない。
ならば…嘘をつかないで何とか乗りきれないだろうか。
表情をさとられないよう、自分の足元へ視線をおとす。
『はい…太巻瑠璃です。』
「お前は…テンゾウの知っている…太巻瑠璃か?」