第8章 私とワタシ
もうすぐ自宅という所で、思いもよらない方と出くわした私は、思いっきり緊張していた。
心のヒーローisナルト君!!
心の恋人isカカシ先生!!
を、掲げる私にとって、夜道の月明かりに照らされた、真剣な面持ちのカカシ先生とツーショットという
この夢のような現状に…あがりまくっていたのだ。
『あの…先程は…というか、病院でも…ど、どうもお世話になりました…』
どういう経緯で、この場にカカシ先生が待っていたのかは分からないが、折角話せるこの好条件!!掴まなくてはヲタクが廃る!!と、
心を奮い立たせて、私は声をかけた。
「あぁ…病院のこと…覚えてたんだね?そっか…」
『???』
何とも歯切れの悪い返しに、私は首を傾げてカカシ先生を見つめると…
咄嗟に腕を掴まれ、近くの壁へと抑え込まれた。胸に当たるコンクリートの硬さに鈍痛が走る。
両手首を後ろ手で押さえられ、押し付けられた壁と、後ろのカカシ先生とで身動き出来ない状態にされたのだった。
これは…どう考えても…ロマンチックな包容ではない…。
「犯人大人しくしろ!!」という刑事ドラマでありそうな場面である。
突然の拘束に、恐怖で膝が震える。
「嘘偽りなく話してくれたら…すぐに解放するから…」
耳元で囁かれる井●さんボイスに…
思わず真っ赤になってしまう。
こんな状況でも、良い声!!と照れるあたり…どうしようもないな自分!と叱ってしまいたい。
「あんた本当は…」
『な、な、なんですか!?』
恐怖と恥ずかしさから声が震えている。
「はぁ~…」
色々な意味で緊張していた私は、
何とも重苦しい溜め息に困惑していた。
何故私はこの状況で溜め息をはかれなくてはいけないのだろうか…。