第8章 私とワタシ
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言葉につまった私のせいで、
何とも居心地の悪い空気が流れる。
なんて鋭い人なんだろう。
恐らく、飲み会の席で様子を見られていたのだろう。
そう、でも私に出来ることは一つ。
嘘なんて突き通せる人間じゃないんだから。
『分かりません…覚えてないんです…』
カカシ先生の鋭い視線が刺さっているのを感じ、更に冷や汗が伝うのを感じる。
「それなら、何故テンゾウにそう伝えなかった?伝えられない事情でも…あるのか?」
まるっきり、尋問である。
どうもこんにちは!
異世界から飛んできた太巻瑠璃といいます♪
私の世界では、あなた方は漫画になっていて、この先のことも全部知ってますし、この漫画の大ファンなので
トリップ出来て超ラッキー!!って
感じです♪
なんて…
い え る か 馬鹿たれ…。
そもそも、私はこの世界にもともと存在しているわけであり堂々としていいわけであって…。
本当に…
堂々としていていいのだろうか…。
もう一人の私って何なのだろう。
その私は…どうなったのだろうか。
成り代わりというのがあるのも
聞いたことはある。
でももしも、そうではなくて
私がこの世界に飛ばされたことで
もう一人の私も、また別の世界へ飛ばされてしまったのかもしれない。
この世界で、ヤマトさんにとっての
かけがえのない太巻瑠璃が…。
「おい…答えられないのか?
やはりお前は………っ!!」
自分でも何故泣いているのか分からなかった。
かもしれないという可能性に気づき怖くなったのかもしれない。
しかし、問い詰めようとしていたカカシ先生の言葉が詰まり、代わりに優しく頭を撫でる手の感触と
すまない…。
という謝罪の言葉に
私は涙をとめることが出来なくなってしまった。
―――――――……
(そもそも、俺の勘違いかもしれないし、思い過ごしだったかもしれない。悪かった…)
湯船に浸かりながら、先程の出来事を思い返していた。
泣き出した私に、彼はそれ以上
なにかを問うわけでもなく
家の近くまで送り届けてくれた。
『顔…ほとんど見えないけど…、
あれってさぁ…ブクブクブク…』
申し訳ないのはこっちだよね…。
湯船に口許まで浸かりながら
気まずそうに目を細めたカカシ先生の
表情を思い返していた。