第1章 チョコレート大戦争【水神姫シリーズスピンオフ】
突然のマイからの問いかけに、ナルトはきょとんとしつつも、質問の答えを一生懸命に探っていく。
指折り数えながら、これは違うだの、この日は来月だのとブツブツ考えるナルトに、マイは優しく微笑み背中に隠していた物を差し出した。
『はい。一生懸命作りました♪貰ってくれると嬉しいです』
「えっ!?た、誕生日はまだまだだってばよ?」
『フフフ…。バレンタインだよナルト!お口に合うかは保証出来ないけどね。』
ほんのり赤面するナルトの様子を見るからして、バレンタインという行事の意味合いは知っているようだった。
しかし、貰ったことのないナルトは、マイからの思いがけないプレゼントに気恥ずかしくも嬉しい気持ちで満たされていた。
「あ、ありがと…ってばよ…。」
『サクラちゃんじゃなくて…残念だけどね?』
「な、な、な!何言ってるってばよ!?」
(分かりやすすぎだぞ…ナルト…)
―――――……
いつも疎らな時間帯のはずが、今日の事務室はそうではなかった。
独身男性達が早々に集まり、何やら会合をしている。
「いいか。恨みっこなしだ」
「毎年義理チョコは貰える。それは確定事項だ」
「本命が誰かということが問題だ」
「俺が思うに…確率の高さからいくと…」
円になり話し合う男性達の視線が、調度事務室の扉を開けて出勤してきた男へと集まる。既に誰かにバレンタインを貰ったようで、手には可愛いらしい包装物をもっていた。それが更に、他の男性達を、触発することとなる。
「おはようございま…す…?」
うみのイルカ。
後々、念願の告白を果すこととなる現在絶賛片想い中のこの男は、強敵なライバルとして、マイ本命予想1位の座に躍り出ていたのである。