第1章 チョコレート大戦争【水神姫シリーズスピンオフ】
「あ、あ、ありがとうこざいます!」
『いえいえ…お口に合うと嬉しいです』
昼休みになり、マイは昨日から用意しておいたバレンタインの包みを男性職員に配っていく。
義理チョコとは分かっていながらも、皆、マイから貰えるのが嬉しいようだ。
皆に配り終えて、マイが事務室を後にすると、男性陣が集まり貰ったものを一斉に見せ合い、皆崩れ落ちていった。
全員同じ、ココアマフィンと可愛らしいチョコが入ったセロファンの袋包だったのだ。そう、これは義理チョコということである。
近くの席に座っていたイルカもまた、落胆するのだった。
予想1位のイルカが外れたことで、男性陣達は、本命はいない可能性に喜んでいた。
しかしイルカは違かった。
思い当たる節があるのだ。
そう…最近マイへの接触が増えた、里一の業師、彼ではないかと。
――――……
「カカシ先生!!」
「ど~も。」
翌日、自分のなかで芽生えた不安を消し去るかのように、イルカは通りすがりのカカシを呼び止めた。
「あ、あの…昨日はバレンタインでしたね…。カカシ先生はモテますから…たくさん貰ったんじゃないですか?アハハ」
「あ~、まぁ…そこそこです」
否定しないのかよ!!と、心のなかで突っ込みをいれつつ、イルカは本題へと切り込んだ。
「あの…受付の…マイさんから…その…貰ったりしたんですか?」
「あぁ、もらいましたよ」
やはりそうか…。自分の予想は当たってしまったと、落胆したのも束の間、カカシから出た言葉に驚くのだった。
「マフィンとチョコ…。でも俺、甘いもの苦手なんですよね~」
義理チョコだった。
イルカは外れた予想に、心の中でガッツポーズをし、軽く会話を交わすとその場を後にしたのだった。