第1章 チョコレート大戦争【水神姫シリーズスピンオフ】
手慣れた様子でアパートの鍵をあけ、いつも通り脱ぎ散らかされた服をかき集め、洗濯機へと放り込むと、カーテンを空けに窓際に立つマイ。
曇った硝子が外の寒さを実感させる。
降り積もった雪は溶けることなく、何ともロマンチックなホワイトバレンタイン当日を迎えたのだった。
朝御飯の支度を始めると、美味しそうな匂いにつられるかのように、部屋主であるナルトが眠そうに目を擦りながら起きてきた。
『おはよ♪今日も寒いね。もうすぐご飯出来るからね!』
「おはよー…へっぷし!!う~寒いってばよぉ」
『お腹出して寝てるからよ?さ、早く着替えておいで』
朝起きて、ナルトの家で共に朝御飯を食べるようになってから数ヶ月。
最初の頃は、受付の事務、暗部としての任務に加えナルトの世話が追加されたことで大変だと思ったこともあったが、殺伐とした生活のなかで、マイにとってもナルトと過ごせる時間は一時の安らぎとなっていった。
身支度を整えたナルトが、美味しそうに朝御飯を頬張る姿は、何とも作り概がある。マイはそれだけで満腹になるような気持ちになった。
食べ終えた食器を片付け終えると、マイは用意してきた物を背中に隠し、ナルトへと声をかけた。
『さて、今日は何の日でしょうか?』