第1章 チョコレート大戦争【水神姫シリーズスピンオフ】
イルカが何故、その様なことを聞いてきたのかは、すぐに分かった。
彼がマイへ恋心があることは、見ていればすぐに分かることだった。
その事に対して少し引っ掛かる気持ちがあるのは確かだが、昔の想い人と雰囲気が被る彼女に興味はあれど、恋心はないとカカシは自分の膨れつつある彼女への想いに蓋をする。
しかし、イルカから振られたバレンタインの話題で、ふと変わった物を貰ったのを思い出していた。
任務明けで、朝方自宅へ帰ると、ドアノブに保冷バックが下がっていたのだ。
中にはタッパに入ったサンマの塩焼きと、水筒には暖かい味噌汁がはいっていた。そして、抹茶のマフィンと1枚の手紙。
変わったプレゼントに驚きつつも、カカシにとっては何よりのご馳走で、朝飯に食べたのだった。
「美味しかったけど…色気のないバレンタインではあったよねぇ…。それにしても誰だったのかねぇ…。」
――――――……
『さてと…アイツには…やっぱりあれかね…』
バレンタイン当日の朝、皆に配るマフィンを袋に詰め終え、マイはバレンタインの準備には似つかわしくない秋刀魚やナス等の材料を冷蔵庫から取り出し、手際よく調理していくのだった。
――――――――……
― はたけカカシ様
任務御苦労様です。
甘いものが苦手とのことですので、
朝御飯を作りました。
抹茶のマフィンは甘さを抑えてありますので、もし宜しければどうぞ。
怪しいものではありませんので、ご安心を…。
貴方のファンより―
――――――――……
『アイツ…食べたかなぁ?やっぱり匿名はまずかったかな…。忍なら怪しむよね…ハハ』
チョコレート戦争は
秋刀魚と味噌汁の勝利で終わったのだった。
Fin