第8章 弱音と強がり
火影邸を後にしたアスマ、紅、マイは紅の部屋で飲み直しと称した、マイ相談会のために集っていた。
『あの…ありがとうございました。それと…ただいま…』
気恥ずかしそうにマイは、はにかんで告げる。
「話したいことは山ほどあるけど…とりあえず…カカシとなんかあった?」
紅の言葉に、何で…という表情のマイにアスマがすかさず突っ込む。
「んなの…とっくにバレバレなんだよ…、昔からな♪」
お前忍としては一流だが、普段はすぐ態度に出るからな…とゲラゲラ笑うアスマ。
プーッと膨れてふてくされるマイ。
マイはゆっくり話しだした。
親衛隊にカカシの男の部分を、聞かされた事。
信じたくはなかったが、ショックだったこと。
飲み会の後に、カカシが女とキスしていた所を見てしまったこと。
そのあと…自分を追ってきて…
「「っつ…あんの馬鹿…」」
一通り話し終えて、深呼吸をするマイ。
『ショック…だったんだと…思います。離れていた間に…知らない男の人になってたことが…』
「自分以外が知っていることに…ショックだったんじゃない?」
え――……
紅の言葉に、胸の奥がズキリと痛む。
「アイツな…無茶苦茶やってたんだよ…。お前が死んだと聞かされた後。
女遊びが激しくなったのも…暗部に入隊したのも…、お前と離れてからだ。」
少し眉を下げたアスマが続けて言う。
「見える部分だけで…離れていた時間のアイツを決めつけるのは…違うだろ?」
『見える部分だけ…』
アスマの言う通りだった。
受付仕事をするようになり、カカシの女癖の悪い噂をよく耳にするようになり、飄々とした、軽そうな雰囲気のカカシに驚き、実際にたくさんの女性と関係を持っていることを知り…。
だが、そんなのはあくまでも表面上のことだけだ。
毎日慰霊碑に行くカカシ。
オビトのように遅刻したり、自分達の忍道を伝えてくれていたカカシ。
あの時だって…キスしてきた時も…
すごく辛そうな顔をしていた。
本当は伝えたいこと、見えてないカカシを…見せようとしていたのかもしれない。
マイはアスマの言葉に、少しモヤモヤしていた気持ちが晴れていくようだった。