第8章 弱音と強がり
火影の言葉に、やっと納得するマイ。
すっと視線を移すと、先程のマイのように項垂れる紅の姿が目にはいり、申し訳なさそうに見つめる。
「でも…人間らしくて…ちょっと嬉しいわ。人間関係のこと、生活のこと、恋のこと…悩むのは当たり前よね。
同じ人間で、仲間だもの…」
紅はマイに優しく微笑みかけて告げる。
仲間……。
この人も自分をすんなり仲間と受け入れてくれるのか。
マイは、またも目頭が熱くなる。
『結構…クールなつもりなんですけどね…先輩達の前ではどうも…はは』
紅とマイのやり取りを静かに見ていた火影が口を開く。
「マイ…。やはり公にしても良いのではないかの?」
『!それは…しかし…』
火影はマイをまっすぐ見つめると、更に続けた。
「何れ隠し通せぬことになろう…。お主が木ノ葉を按じて言っておるのは百も承知じゃ。だが、木ノ葉はお主一人守れぬほど、柔な里かの…?」
そんなこと…ない。
頭では分かっている。自分自身も皆に包み隠さず話して、里の為に尽くしたい。
しかし…。
マイは一族が全滅した、あの夜の事を思い出していた。
「ワシはな、マイ。
お主達、水流園に感謝しておる。感謝しきれぬ。木ノ葉の土台を共に築きあげてくれたことに。
しかし、お主らを助けられなかった…。
すまなかったの…。」
唇を噛みしめ、火影を見つめるマイ。
「幸せに…なっても良いのではないか?」
私は…十分幸せ…。
「素顔を隠さず、仲間を信じ、人生を楽しんでも…良いのではないか?」
大丈夫…大丈夫…なの。
今のままで…。
「いつでも…祈っておったぞ。お主の父、水流園ナガレは…」
『父様…が…』
目を見開き驚くマイ。
火影は尚も続けた。
「水流園の長であったナガレとは、手合わせしたり、色々な事を話した…。
ナガレは…お主の才能をいつでも誇らしそうに話しておった。じゃが、嘆いてもおった…。」
思わぬ父の話しにマイは堪らず顔を伏せる。
「水流園は強い。じゃが、それ故に過酷な道を歩むであろうことを、ナガレは知っておったのやもしれぬ。
お主のことを…いつでも考えておった。
お主の幸せを按じておった…」