第7章 知らない貴方
拘束された手は到底振りほどくことは出来ず、マイはカカシに思うままに唇を犯されていく。
カカシの舌が唇を割り中へと侵入しようとした瞬間、ふっと鼻先を掠める甘い香水の香り。
ガリッ!!
「っつ…」
突然の痛みに顔をしかめ、抑えていた手を放すカカシ。
切れた唇から伝う血を指で拭いながらも、視界からマイを逃がさない。
荒い呼吸を肩でしながら、マイは
カカシを睨み付ける。
『香水…。吐き気がします…』
マイの言葉に、のぼせ上がっていた頭に冷水がかかったかのように、カカシは我に帰る。
「あ…これは…ご、ごめ…」
『知らない…』
カカシが発する謝罪の言葉を、打ち消すように叫ぶマイ。
『こんなカカシ!!私は知らない!!』
走りさるマイの背中を見つめ、
カカシは唇をぐっと噛み締める。
…こんなカカシ…私は知らない…
今の自分でなければ知っているともとれる、この言葉。
やはり、自分の読みは当たっているのではないか。
目の前で確認したマイの素顔…。
水流園一族ならあり得る絶世の美女。
ずっとカカシの胸の内を占めていた答えにありつけそうだったが…
今はそれもどうでもいいほど、カカシは目の前のマイのことで頭が一杯だった。
頬を伝うマイの涙が…目に焼き付いて離れない。