第7章 知らない貴方
「……ちょ…ちょ…やべぇよ…」
ゲンマが口元を抑えて、びっくりした表情で自分を見つめているのを見て、マイは自分の傷痕を思い出し、慌ててゲンマに謝罪する。
『あ…ごめんなさい。傷痕見えましたよね?そうなんです…ヤバいくらい痕になってて…』
マイがいい終える前にゲンマが被せるように告げる。
「違う!違う!勿体ないってこと!」
…勿体ない…
勿体ない…???
明らかに理解出来ていないマイの表情を見て、ゲンマはさらに続ける。
「だからぁ…口布しててもキレイだろうことは分かるけど、想像以上に美人だったから…」
『誰が?』
「「「「「お前がだ!」」」」」
その場にいた全員がハモる。
確かに、水流園一族は美形で有名なことはマイも分かっていたが、自分は然程ではないと勝手に思い込んでいるため、
『勘違いですよ~』
と、笑って答えた。
――――……
カカシが遅れて店に着くと、座敷の方から乾杯の音読が聞こえた。
声の方へと視線を写すと、奥にマイの姿を見つける。口布を下ろす場面を目撃し、カカシはその場に立ち止まってしまった。
耳の下から顎にかけてある傷痕…等ではなく、
その横顔に見入ってしまったのだ。
絶世の美女といっても大袈裟にはならないであろう面持ちに、昔、お互いの顔を見せ合った「翠月マイ」が重なった気がしたからだ。
あの頃の#マイ#と、目の前にいる大人のマイとでは比べものにならない程、色っぽい端正な顔立ちなのだが、何故か引っ掛かりを感じていた。
「マイさん、モテるでしょ?彼氏とかいないの?」
ゲンマの言葉にカカシは顔を向ける。