第7章 知らない貴方
「…うわ…マジで可愛いっすね…」
向かいに座るゲンマが突然溢した言葉に
マイは同意するように頷く。
『分かります分かります。私も夕日上忍のファンですから』
……………………はい?
酔ったアンコまでもがマイへと視線を向ける。
「あ…ありがと…でも、多分私のことじゃないような…」
『みたらし特別上忍のことでしたか?二人とも素敵ですからね♪』
ニコニコとご機嫌でゲンマに語るマイに、皆心のなかでハモるのだった。
(((((……噂に違わぬ…鈍感さだ……)))))
「ビールも来たことだし、改めて乾杯♪」
お疲れ様ぁ~!とグラスを掲げ、少し遠慮がちに口布を下ろしビールを飲むマイ。
すると、突然の聞き慣れた声にマイは盛大に咳き込むと、すかさず口布を上げた。
「ちょっとねぇ、俺がまだでしょうよ」
「遅いからでしょうが!この遅刻魔が!さっさと飲め!」
遅れて登場したカカシに、さっそく絡むアンコ。
マイはそっと顔を横に向けカカシを見る。
いつもと変わらぬ飄々とした雰囲気で、絡むアンコの対応をするカカシ。
その様子に少しホッとするマイ。
一方的に当たり散らす形になってしまった昼間の出来事をマイも気にしていたのだ。
何故あんなにもショックで、あんなにも腹が立ったのか…。
考えない様にしていた感情が、何であるのかマイは気付いてしまっている。
だからあんなにも苛ついたのだ。
昔からカカシに対して抱いていたのかもしれない。
戦友というにはあまりにも全てを見せて、伝えてしまっている。しかし、この想いに気付いた今、自分はカカシに全てを伝えて、向き合う事が出来ないでいる。
決して言葉にしないこの想い。
言葉に出してしまったら、きっとカカシを求めてしまうことがマイは容易に理解できたからだ。
それに比べ彼女達は、カカシにありのままぶつかっている。自分の知らない、男のカカシを知っていることが余計に腹立たしかったのかもしれない。
(これって…嫉妬?私かっこわる~)
目の前に置かれたビールグラスを傾けながら、自分の不甲斐なさを痛感していた。