第2章 水神姫
月を眺めつつ話すマイは
どこか儚げで、それでいて
目には強い意思の光が宿っているようだった。
先程までのシリアスな表情とは
うってかわり、クルッとおどけて振り返り
『だーかーら!!
ひー爺様はもっと私に頼って下さいな♪』
そう告げると、
ヒラヒラと手をふりつつ
お休みなさーい とマイは瞬身で火影室を
後にした。
マイが去った後、
窓際へと手をかけ火影も月を眺める。
「あの夜も…こんな月の綺麗な夜じゃった…」
━━━━━━━━━━━━━━━…………
九尾が里に襲来した夜。
誰もが里のために命を削り、
里のためにいくつもの命を散らした。
四代目火影の命と、引き換えに
終結した惨劇に誰もが涙したあの時
一人の少女が
綱手と共に三代目火影のもとに訪れた。
まだ幼い子供の面影を残しつつ
絶世の美女という言葉が似合う少女で
目からは涙を流し、綱手に抱き締められながら
泣きじゃくる姿は、何とも心の痛む光景だった。
『い、一族が…
私の…私の…か、家族が…』
少女を抱き締めた綱手から語られた
真相は、九尾襲来の悲しみを
更に増幅させるものだった。