第2章 水神姫
火の国
木ノ葉隠れの里…
その頂点に君臨する
忍の長であり、里の長…火影
歴代の火影が彫られた岩壁<火影岩>が
目をひく里の中枢、岩壁のふもとに
<火>の文字を掲げた建物
忍術学校、通称アカデミーの火影室の窓際に
一つの影が静かに降り立った。
「水姫…か…」
その言葉にスッと室内に降り立ち
方膝を床につけ頭をさげた申面の暗部は
静かに凛とした声で
『只今…戻りました。任務は無事遂行。
抜け忍は抹殺のち、抹消致しました。』
そう告げる。
暗部に背を向けるように立っていた
老人はゆっくりと振り向きつつ
どこか優しい声色で
「そうか…ご苦労じゃったな…マイ」
と、暗部名ではなく本名で返す。
その言葉を聞き、水姫否、マイは
スッと立ち上がり、申面をとり
暗部特有の黒マントを脱ぎつつクスッと笑いながら
『苦労ってほどじゃないわ。ひー爺様』
と、笠をかぶり、キセルをふかす老人へ
綺麗な笑みをこぼした。
「また抜け忍が出てしまうとはな…
一度は同じ火の意思を持った者…。
マイには嫌な役回りをさせてしもうた…」
そう告げ、少し顔をふせ悲しげに語る
この老人こそ…
忍最強と唱われる、木ノ葉隠れの里の頂点
火影…猿飛ヒルゼンである。
歴代火影の中でも最強と唱われた彼は
強さの中に、優しさを合わせもち
里の民から愛されて、絶大な指示を
もっている。
一つに結い上げられた髪を
ふりほどき、火影室のソファーに腰かけ
『ふぅー、ひー爺様は優しすぎるのよ…。
一人で何でも背負いこもうとするんですもの…。』
マイはどこか拗ねたような口ぶりで
話しはじめる。
『私はね…この暗部の仕事に誇りをもってるの。
私を、私の一族を愛してくれた
この里を守れること…
水流園一族が誇りを持って務めあげた
この暗部という仕事を…ね』
マイはスッと窓の外
綺麗な月に目線を写し続ける。
『確かに綺麗な仕事ではないわ…。
ひー爺様の前でごめんなさい。
でも、それでも私は幸せなの。
ひー爺様…ううん…
火影様のもとで力に慣れることが。
私の一族を愛してくれて
火影でありながら仇をとって下さった、
火影様を今度は私が守るの…。』