第5章 悩める男心
『また…来てもいいですか?』
『お大事にしてくださいね。イルカ先生』
はたけカカシという、思わぬ邪魔が
入ったのは残念だったが
イルカは、心がポカポカするのを感じていた。
一人の人間に、あんなにも心から
心配し、安堵し、喜べる人がいるだろうか。
仕事が出来て、落ち着いていて
どこか大人の余裕を持ち合わせている
マイだが、
先程、自分に見せた表情は
少し幼げだった。
それが嬉しくて、つい告白しそうになったのだが、
カカシによって妨げられてしまった。
今までは、ナルトの保護者代わりと、担任という関係にそれなりに満足していた。
周りの男達に比べ、自分は近い存在であるとイルカは感じていたからだ。
しかし、先程のマイを感じてしまってから、それだけでは満足出来ない自分に
気がついてしまったようだ。
「本当に…貴女って人は…
黒薔薇姫ですね……」
寄せ付けないようで
隙がある…
冷たいようで…暖かい…
気づいた時には
棘に絡まって抜け出せなくなる…
窓越しに見える夕日を見つめ
自分の止めどない欲に苦笑するイルカだった。