第3章 葛藤
木ノ葉の里にある居酒屋「酒酒屋」に
マイとアスマの姿があった。
『……というか、何故居酒屋に……』
火影から今までの経緯を聞いたアスマは
特に何を言うでもなく、受け止め、
マイを居酒屋へと誘ったのだ。
「いやぁ…なんか、お前とこうやって居酒屋にいるのは
変な感じだな。
なんせ、12年ぶりだからな……」
アスマが16歳、マイが14歳の時以来になるのだ。
『明日も早いですから…そろそろ帰りますよ?』
洗いざらいアスマにばれたマイは
罰が悪そうにふてくされた様子で告げる。
しかし、暗部である事は火影が伏せて語った為、
これから任務があることは隠し、誤魔化す。
「相変わらず連れねぇな……
可愛くねぇガキなのは今も健在だな…」
クスクス笑うアスマに
『ちょ!アスマ先輩そんな風に思ってたんですか?
失礼な…』
と、さらに膨れるマイ。
当時、中忍昇格年齢はアスマより早く
自分が上司の立場であったが、
年上で何かと頼れる兄貴的存在だったアスマの事を
マイは先輩と呼んでいた。
「懐かしいな…先輩か。
そんな事より……お前が…あの!
一族ねぇ…。
どうりで、べらぼうに強い訳だ。」
アスマはあえて、水流園の姓をふせて話す。
『すみません…隠すしかなくて……』
マイは、共に死線をくぐってきたアスマに、否、仲間達に、自分の正体を隠していたことが、たまらなく申し訳なかった。
「んなの、お前が好きで隠してた訳じゃないだろ?
謝るこたねえよ…。
クソ真面目なのも、かわんねえな…クク。」
アスマは先程から、酒を飲むわけでも食事に手をつける事もしないマイに、
その細身の身体に背負うものが、どれだけ重いモノかを感じていた。
ふと、マイの口布に視線を向ける。
「それが……お前の選んだ道か」
と、少し視線を落とし呟いた。