第3章 葛藤
『いいんです。
私、今幸せなんですよ……。
ひー爺…火影様には返しきれないご恩があります。
ナルトにも、すごくすごく感謝してます。
それに…すぐに受け入れてくれたアスマ先輩にも。
私、この里が大好きなんです。
だから、これくらい何ともないんです』
マイは、嘘偽りない気持ちをアスマへ伝えた。
『そ・れ・よ・り・も!
いいんですかねぇ、私なんかと二人で
居酒屋になんて来て…。
紅先輩にばれてもしりませんよ?』
「なんで紅が出てくんだよ……関係ねぇだろうが」
『またまた~。私が知らない間に
いい感じになったんでしょう??(ニヤニヤ)』
「っつ…この野郎……」
『今日は……その色々とすみませんでした。
それから…ありがとうございました。』
居酒屋を後にし、帰り道の道中
ふと足をとめ、マイはアスマに頭を下げた。
「驚いたが…とにかく生きてて良かったよ。」
煙草をふかしながら、はにかむアスマは
「そうだ…マイ……。
木ノ葉はよ…いつでもお前の味方だからな。
辛かったら、その重い荷物を降ろしたって構わないんだ。
伊達に忍最強は語ってねぇよ……
うちのジジィの里はよ」
アスマは、マイが背負う
水流園一族であるという運命、
自分の正体が他国へばれることで、木ノ葉に少なからず危険を及ぼすかもしれないという負い目…
顔を隠して生きなくてもいいんだと、
少ない言葉で伝えた。
「それからお前…アイツには話してないんだろ?」
アイツ、という単語に一瞬ピクッと肩をゆらすマイ。
「アイツはさ、お前の運命くらい背負って生きていけると
思うぜ…。あぁ見えて、結構器のデカイやつだからな」
じゃぁな!とヒラヒラと手を振り帰っていくアスマ。
その背中を見つめるマイは、
少しだが、肩の荷が下りたような気がした。
昔からの仲間に話すことが出来たからだろうか、
それとも、アスマの包容力の大きさにだろうか……。
マイは去っていく、大きな大きな背中に
静かに一礼するのだった。
『アイツ…か……
でも、機密をベラベラしゃべる馬鹿がどこにいるっての…。鋭いからバレそうだけど……』
と、里一の忍を想いながら
家路についた。