第3章 葛藤
見詰め合う二人の間に
なんともいえぬ重い空気が漂う。
それを打破したのはマイだった。
『こ……』
「こ……?」
アスマは身構える…。
『こ、怖かったぁ~。テヘ♪』
思いもよらぬ発言に、アスマは顔を引きつらせ
苦笑を漏らす。
ふざけた発言とは裏腹に、マイは内心
かなり動揺していた。
見られた…どこからだろうか…
一般人では、もう通らない…
そして、決定的な一打……。
顔を伏せていたマイの頭上から
いつの間にか側まで来ていたアスマの声が降ってきた。
「お前……生きてたのか………」
『あ…あの……、何のことやら………』
声が震える…。
「受付にいたお前が…まさかな」
『だ、だから……あの…何を………』
やめて、やめて……
「大戦の後は、いったいどこにいたんだよ」
『ちょ……な…に………』
巻き込めない…だから、だから………
「おい!聞いてるのか翠月…『違うっ!!!!』
『違う!違う違う!!!』
マイは問いただすアスマの言葉を遮る様に叫んだ。
アスマは、あやふやな面影だけで問いただしたが
マイの反応が、確信へと変えた。
顔を伏せ、拳を強く握り締め、体を震わすマイ。
アスマは、そっとマイの頭に手を置き…
「それなら、何でお前は
ずっと泣きそうなツラしてんだよ…」
そう告げると、ハッとして顔をあげたマイは
その先にあった、アスマの優しい笑みを見て
今まで溜め込んでいた感情が、一気に溢れ出すのを感じた。
そっと、アスマが抱きしめると
声を上げ、マイは泣いたのだった。