第3章 葛藤
時、同じくしてマイは
ふと人の気配に気づき、慰霊碑を眺めていた
おだやかな顔を、鋭い物へとかえた。
すると、少し離れた所から
「マスクしてても…バレバレなの?」
と、今一番会いたくない男の登場に
内心顔を引きつらせるマイであった。
座っていたマイは立ち上がると、
ポケットに手を入れ、
猫背でトボトボと歩いてくるカカシに
『えっと……はたけカカシ、さんですよね?』
と、悟られないように
ごくごく穏やかに尋ね返した。
「ん~…俺の名前、知ってるんだぁ?」
『えぇ、お顔のほとんどが布で覆われていて、
何よりもその銀髪。
里一の業師…と、木ノ葉で知らない人なんて
いませんよ?
それに…女性の間では常に
噂の常連様でいらっしゃいますから…』
何とか平常心を保ち、
当たり障りのない返答をしていくマイだが、
最後の一文には、厭味もこめてやった。
(里一の色男だ…色魔だ…
泣かせた女は数知れず…?
昔のカカシからは想像もつかないわ…
ったく、馬鹿…)
笑顔の裏で、悪態をつくマイだった。
一方、カカシは
少しでもマイのことを知ろうと、
カマをかけてみることにした。
「あ~のさ、マイちゃんだっけ?
受付で有名だからね、君…。
慰霊碑には、よくくるの?
知り合いが眠ってるのかな…?
それとも…
あっちの石柱に用があった…かな?」