第3章 葛藤
とめどなく湧き出る湧き水のように
伝えたい事があふれてきた。
それは…あの戦国の世だった青春時代を
共に歩んでいたカカシの姿を
見たからかもしれない…。
『昔から、整ってたけどさ…
やっぱり、かっこよくなってたなぁ…
マスクしててもバレバレだよね…』
慰霊碑をみつめながら、
カカシの事を思い出すマイの頬は、
口布の下でほんのりと赤く染まっていた。
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待機所で一人、堂々と18禁本を読んでいる男
カカシは、大好きな本を前にして
まったく内容が頭に入ってこないでいた。
先程、受付でマイを見ていた時、
彼女が窓から席へ移る一瞬、ほんの一瞬であったが
確かにマイはカカシを見たのだ。
あれだけ人がたくさんいた、受付室内…
まして、入り口に気配を消して
立っていたカカシへ
確実に一発で視線を向けたのだ。
「見間違い…かもしれないけど…ねぇ…」
何とも言えないモヤモヤした感情に取り付かれた
カカシは、気持ちを落ち着かせる為に
いつものアノ場所へと足を向けたのだった。
慰霊碑の近くまできたカカシは
ふと、人の気配に歩みを止めた。
よく見ると…誰であろう、
モヤモヤの張本人が慰霊碑の前に座り込んで
何やらブツブツと独り言を話していた。
そっと気配を消し、耳を傾けると
『………から…ってた、ねぇ……
マスクしてても、バレバレだよね…』