第10章 家族になる
イギリスの街角に佇む、小さな石造りの教会。
その扉の前で、英美子は白いドレスの裾を整えながら、深呼吸を繰り返していた。
招待状を送った家族の中で、来てくれたのは恵美だけだった。
彼女は遠くから駆けつけ、英美子の手を握って微笑んだ。
「綺麗だよ、英美子。ほんとに、よかったね。」
「…ありがとう。来てくれて。」
千切の家族は列席していたが、英美子の席がぽっかりと空いていることに、千切は違和感を覚えた。
式の前、控室で彼はそっと英美子に尋ねた。
「…英美子。家族、来ないの?」
英美子は少しだけ目を伏せて、静かに答えた。
「私、母にも弟妹にも…ずっと格差をつけられて育ったの。
家族って呼べるような関係じゃなかった。
叩かれたり、無視されたり…恵美だけが、ずっと味方でいてくれた。」
千切は言葉を失い、彼女の手を強く握った。
その瞳には、怒りと悲しみ、そして深い決意が宿っていた。
「英美子。俺が、これからの家族になる。
過去の痛みも、全部俺が抱える。
絶対に、もう一人にしない。」
英美子は、涙をこぼしながら頷いた。
その涙は、悲しみではなく、救われた証だった。
教会の扉が開き、英美子が恵美に付き添われ、千切に向かってヴァージンロードを杖をつきながら近づいていく。
千切は祭壇の前で待っていた。
友人席では潔、蜂楽、玲王、凪が並び、晴れの日を見守っていた。