第9章 2人の暮らし
ある晩、夕食を終えたあと、千切はベランダに英美子を呼び出した。
空には星がちらほらと瞬いていて、風は少し冷たかった。
「寒くない?」
「ううん。ちょうどいい。」
千切は、ポケットから小さな箱を取り出した。
英美子が驚いて目を見開くと、彼は少しだけ照れたように笑った。
「ここでの生活、すごく幸せなんだ。
英美子とサクラと、毎日が穏やかで、でもちゃんと心が動いてる。
だから、これからもずっと一緒にいたい。
英美子、俺と結婚してくれませんか?」
英美子は、言葉を失ったまま彼を見つめた。
胸の奥が、静かに震えていた。
「…うん。こちらこそ、よろしくお願いします。」
千切は、そっと指輪を彼女の薬指にはめた。
サクラが部屋の中から小さく鳴いて、ふたりの背中を見守っていた。