第6章 恋の始まり
「変じゃない。俺は、ずっとこうしたかった。」
「でも、私たち…ただの友達でしょ?」
千切は少しだけ黙ってから、真っ直ぐに彼女を見た。
「俺は、そう思ってなかった。ずっと、伝えられなかっただけで。」
英美子は言葉を失い、視線を落とした。
そのとき、ルームサービスのノックが響き、二人は少しだけ現実に引き戻された。
食事をテーブルに並べ、湯気の立つスープを口に運ぶ。
その温かさが、少しだけ緊張をほどいてくれる。
「…美味しいね。」
「うん。英美子と食べるから、余計に。」
「…口がうまくなったね、豹馬。」
「本音だよ。」
彼の声は、どこまでもまっすぐだった。
ルームサービスの食器を片付け、カフェオレとコーヒーの香りが部屋に漂う頃。
英美子はソファに腰を下ろし、カップを両手で包みながら、千切とたわいない会話を続けていた。
窓の外には夜の街が広がり、部屋の灯りは柔らかく、静かな時間が流れていた。
千切は、英美子の言葉に時折笑いながらも、どこか落ち着かない様子だった。
彼の視線は、ずっと英美子を捉えていた。
その目は、もう『友人』のものではなかった。
ふと、彼はコーヒーのカップをテーブルに置いた。
そして、ゆっくりと英美子の手に触れた。