第6章 恋の始まり
「英美子…俺と付き合ってほしい。できれば、一緒に暮らしたい。」
その言葉は、静かに、でも確かに空気を震わせた。
英美子は驚きに目を見開き、言葉を失ったまま彼を見つめた。
千切は、彼女の手を包み込むように握りながら、続けた。
「ずっと言えなかった。君がどんな思いで日々を過ごしてるか、知ってるつもりだった。でも、俺の気持ちを隠してるのが、もう苦しくて」
「LINEしてるだけじゃ足りなかった。声が聞きたくて、顔が見たくて、触れたくて…」
英美子は、胸の奥で何かがほどけていくのを感じていた。
彼の言葉は、まっすぐで、どこまでも誠実だった。
「…私、怖かった。誰かに気持ちを向けられるのも、向けるのも。失うのが怖くて、心に壁を作ってた。」
千切は、彼女の手を少しだけ強く握った。
「その壁、俺が少しずつ壊していく。無理にじゃなくて、ちゃんと隣で。」
英美子は、そっと頷いた。
その頷きは、言葉よりも深く、彼の胸に届いた。
「…ありがとう。そう言ってくれて。」
千切は微笑み、彼女の手を離さなかった。
その夜、ふたりの間にあった境界線は、静かに溶けていった。
不意に、千切は彼女の腕を強く引き、胸の中に大事な宝物でも包み込むように、優しくでもしっかりと英美子を抱きしめた。
「―――俺と付き合ってくれる?俺のそばにいるって約束してくれる?」
千切の腕での温もりの中で、心が解けていく感覚を覚えながら、英美子は小さく頷いた。